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自己破産における破産者の復権とは?

  • 文責:所長 弁護士 水野高徳
  • 最終更新日:2025年2月5日

自己破産における「復権」という言葉はご存知でしょうか。

復権とは、自己破産手続きが開始することで生じる制限が、免責許可決定の確定(=自己破産手続きの完了)などにより法律上解除され、元の状態に戻ることを意味します。

引っ越し・旅行の制限や資格制限など、自己破産で生じる制約には様々なものがあります。

自己破産をする際に一定期間制限されるそれらの権利は、破産手続の終了や「復権」により制限が解除されるのです。

つまり、復権とは「自己破産からの復活」と考えて良いでしょう。

自己破産における復権は、破産者の法的地位を復活させるための制度です。

多くの場合、特別な手続きをすることなく自己破産手続き終了後に復権することが可能です。

しかし、中には別途復権の手続きが必要なケースもあります。

今回は、この自己破産における「復権」について解説します。

1 自己破産による制限・制約

まず、復権により解除できる「自己破産をすると受ける様々な制限」には、どのようなものがあるのでしょうか?

代表的なものを以下で説明します。

⑴ 財産管理処分権の喪失

管財事件の際に発生する制限です。

一定の評価額以上の財産を持っている場合、財産処分権は破産管財人に移るので、自ら財産を処分する権限が失われます。

これにより、例えば所持している車を売却したり、マイホームの名義を他の家族に移したりすることができなくなります。

⑵  居住・移動の制限

管財事件の場合、破産者の逃亡や財産隠しを防ぐために、免責許可決定まで裁判所の許可を得ずに勝手に住所変更することができません。

また、長期の出張や旅行などする場合も、裁判所の許可が必要です。

もっとも、一切引っ越しや長期の外出ができないというわけではありません。

引っ越しや長期の外出については、合理的な理由があり、その旨を裁判所が認めれば許可されます。

⑶ 通信の秘密の制限

管財事件に限り、破産者に宛てられた郵便物は破産管財人に転送され、中身をチェックされます。

これは、申立て書類にない負債や資産がないかどうかを、郵便物から確認するためです。

免責決定までの間、郵便物に関するプライバシーは保たれなくなると考えて良いでしょう。

ただし、開封されるのは本人の郵便物のみで、家族の郵便物まで開けられることはありません。

また、宅配便などは対象外です。

⑷ 職業についての資格制限

自己破産の申立てをすると、資格制限を受ける職業があります。

資格制限を受けるのは、弁護士、弁理士、公認会計士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、宅地建物取引業者、警備員、生命保険の募集人などの職業です。

こうした職業は、復権を得ない限りその仕事に就くことはできません。

「破産者で復権を得ない者は従事ができない」といったことなどが法律で定められているので、休職する・部署異動をするなどの対応が必要です。

一般的な公務員の方はこれまでどおり勤務することが可能です。

また、国家資格保持者でも、医師や歯科医師、看護師などの医療従事者は影響ありません。

なお、破産者の履歴があることで、復権後に就くことができない職業があるというわけではありませんので、ご安心ください。

復権をすれば、基本的にはどのような職業であっても再就職・再登録が可能です。

破産や資格制限が理由で懲戒解雇になることもありません。

【資格制限の解除についての注意点】

士業、警備員、生命保険の募集人などの仕事は、復権すれば元どおりに仕事をすることは可能です。

ただし、復権するまでには半年程度の時間を要するので、顧客離れについても対策をしておかなければなりません。

また、急に事務所を閉めるなどのことがあると、一時的にせよ信用が低下する可能性もあります。

職業柄、自己破産をしたことが外部に分かってしまうことを避けたいという場合は、資格制限のない個人再生や任意整理など、別の方法での解決を検討することになります。

⑸ 民法上の資格制限

破産者は、復権するまでの間、後見人、後見監督人、保佐人、補助人、遺言執行者などにもなれません。

その理由は、経済的破綻者に人の財産をゆだねることは適当ではないとされているためです。

この他にも、破産者の制約としては、「破産管財人や債権者の求めに応じて破産に関する説明をする義務」を負ったり、「官報に住所・氏名が掲載」されたりします。

⑹ 引致・監守

管財事件の場合、財産隠しや逃亡を防ぐために必要に応じて身柄が拘束されることもあり、また監視下に置かれる可能性もあります。

2 復権の条件と復権までの期間

では、上記のような制限を解除するための「復権」について説明します。

復権には「当然復権」と「申立てによる復権」の2つがあります。

⑴ 当然復権

当然復権とは、その事由が発生した場合に自然に復権することを指します。

当然復権の場合は、復権に際して特別に何かする必要はありません。

当然復権する事由は以下の4つです。

  • ・免責許可決定の確定時
  • ・破産手続同時廃止決定確定時(同意廃止事件の場合)
  • ・個人再生計画認可決定確定時(免責許可が下りず、個人再生に移行した場合)
  • ・破産手続開始決定後、詐欺破産罪により有罪判決を受けることなく10年経過後(自己破産失敗後に放置した場合)

個人の自己破産においては、多くの場合、免責許可決定が確定したときに復権します。

通常、管財事件の自己破産手続きが終了するのは、申立てをしてからおおよそ4~6か月程度です。

よって、先述の資格制限などは、裁判所への申立てから数えて4~6か月程度継続するということになります。「復権まで何年もの期間がかかる」ということはないのでご安心ください。

一方、同時廃止事件では、裁判所への申立てから数えて3~4か月程度で復権することが多いです。

同時廃止事件では、居住・移動、通信、職業の制限などは発生しないので、手続中に受ける制約は多くはありません。

⑵ 申立てによる復権

申立てによる復権は、当然復権するのを待たずに、裁判所に「復権してください」と申出て、復権をすることです。

復権するのに時間がかかるのは、前項最後の「自己破産が認められなかった後、何もしないで10年経過を待つケース」です(当然、このように放置をすることは望ましくありません。)。

この場合、当然復権する10年の間に以下の要件を満たせば、10年が経過する前に申立てによる復権が可能です。

  • ・破産者が借金の完済をする
  • ・借金の消滅時効が完成する
  • ・債権者が債務免除して返済義務がなくなった

例えば、自己破産を申し立てたものの免責が許可されなかったが、後に親が亡くなって、相続した財産で借金を完済できた場合などがこれにあたります。

こうしたケースでは、破産者が裁判所に申し立てることで破産者でなくなり、復権することができるのです。

ただし、このような手段で復権を得られるケースは稀であり、通常は再度の自己破産を申し立てるか、個人再生に移行して当然復権を得ることになるでしょう。

3 自己破産者の復権に関するよくある質問

⑴ 復権後はクレジットカードを使えるのか

復権後も、一定期間はローン・クレジットカードの利用ができません。

自己破産後は、7年程度は信用情報機関に金融事故情報が登録(ブラックリスト入り)されるので、基本的に新たな借入れやクレジットカードの作成は一切できません。

事故情報の登録は、復権とは別の問題であるためです。

復権というと、自己破産で生じるデメリットが全て消滅するようなイメージがあるかもしれませんが、復権と借入れの可否は全く関係のない話なので、自己破産後にお金は借りられないという前提で生活をする必要があります。

なお、債務の消滅時効が完成して時効援用をすれば、ブラックリストから削除されるだけでなく、申立てによる復権も可能です。

⑵ 復権を確認する方法はあるのか

復権をしたとしても、その旨が通知されるわけではありません。

ご自身が復権しているかを知りたい場合は、市役所等で「身分証明書」を取得することで確認できます。

「一、破産宣告の通知を受けていない」などの記載があれば、復権しているということになります(資格制限がある職業に就く際にも、この身分証明書が必要となります)。

4 自己破産のお悩み・不安は当法人へ相談を

自己破産をすると、一生「破産者」の烙印を押されるのではないかと不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが、破産手続きが終わって復権すれば様々な制限も解除されますのでご安心ください。

自己破産をすると実際にどのような制限があるのか、私生活には具体的にどのような影響があるのか、自分の場合はそれが何年続くのかなどの不安や疑問がある方は、一度弁護士に相談してみてください。

当法人にご相談いただければ、自己破産を始め、借金問題に詳しい弁護士がサポートさせていただきます。

債務整理のご相談は原則として無料ですので、お気軽に専門家にご相談ください。

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