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配偶者の自己破産により実際に生じるデメリット
自己破産と聞くと「とても大きなデメリットが生じるのではないか」というイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません。
特に、配偶者(夫・妻)が自己破産するとなると不安でしょう。
「夫が自己破産したら妻である自分はどうなるのか」という不安だけでなく、配偶者の自己破産が我が子の将来に悪影響を与えるのではないかと不安を感じる方も少なくありません。
しかし、配偶者が自己破産することによる家族への影響は、多くの方がイメージするものよりも小さいと考えられます。
むしろ、自己破産をせずに、返済不能となっている債務が存在し続けることの方が負担は大きいといえます。
ここでは、配偶者の自己破産により実際に生じるデメリットと、家族への影響について説明します。
1 自己破産した場合の影響
⑴ 破産者本人に生じるデメリット
まず、実際に自己破産したときには、破産者本人には次のようなデメリットがあります。
- ・破産者名義の高価な財産が処分される(マイホーム・マイカーなど)
- ・ブラックリストに登録され、新規のクレジットカード作成や借入れができなくなる
- ・自己破産したことが官報で公告される
- ・管財事件の場合、転居や長期間の旅行には裁判所の許可が必要
- ・管財事件の場合、一部の職業には制限が生じ、収入に影響する場合もある
- ・家族が連帯保証人となっている債務があれば、家族に請求がなされる
自己破産は、手持ちの財産と負債(借金)を清算する手続きなので、保有する高価な財産を換価し、債権者に配当する必要があります。
そのため、原則として20万円以上の価値がある破産者名義の資産は、手放さざるを得ないことになります(詳細は各裁判所によって異なります。)。
また、住宅ローンの残っている自宅は抵当権が実行され、ローンの残っている自動車はローン会社に引き上げられるのが通常です。生活必需品となる家具家財などは処分する必要がないのでご安心ください。
また、自己破産や個人再生をすれば、信用情報に事故情報が登録されます(俗に言うブラックリスト入り)。
そのため、7年間程度は、新規に消費者金融から借入れをしたり、クレジットカードを発行したり、他人の借金(ローン)の保証人になるということができません。
他の家族が名義人となるローン(住宅・自動車ローン)や、子どもの奨学金の連帯保証人となることもできないので、注意が必要です。
現在契約中のクレジットカードも途上与信で審査落ちとなり、更新できなくなります。
銀行や保険会社などの金融機関、不動産業、旅行業、警備業、士業といった仕事に就いている方の場合には、自己破産によって生じる資格・職業制限で、収入などに影響が生じる場合もあります。
限られたケースではありますが、破産者の収入が家計を支えている場合、生活に悪影響が発生することになります。
⑵ 配偶者(妻・夫)に生じるデメリット
配偶者の自己破産によって、実際に家族(特に破産者の配偶者)に生じるデメリットは次のとおりです。
- ・自己破産した配偶者名義の持家に住んでいた場合には退去を余儀なくされる
- ・連帯保証人となっている債務の支払いは免れることができない
自己破産すると、住宅ローンが残っていてもいなくても、破産者名義の不動産は原則として処分を免れることができません。
そのため、自宅の名義人である配偶者が自己破産すれば、転居せざるを得なくなります。
その他、破産者の債務のうち家族が連帯保証人となっているものがあれば、その家族には債務を返済する義務があります。
連帯保証人の地位は、仮に離婚をしても消滅することはありません。
なお、自己破産の際には裁判所に家計収支表を提出しますが、これは破産者本人だけでなく同居家族を含む世帯全体の収支を記載します。
そのため、例えば自己破産をするのが夫であっても、妻名義の預金通帳や給与明細のコピーの提出を求められる可能性があるので、その際には用意が必要です。
2 配偶者の自己破産による影響まとめ
配偶者が自己破産をすることによって、マイホームを失わざるを得なくなったり、配偶者に子どもの奨学金などの保証人になってもらうことができなくなるというデメリットがあります。
しかし、仮にマイホームが破産をしない方の配偶者の名義であれば、自己破産による換価処分の対象にはなりません。
また、破産をしない方の配偶者の名前はブラックリストには載らないので、その方の名義でローンを組んだり、子どもの奨学金の保証人になることはできます。
自己破産の影響は、あくまで破産者本人にのみに生じるのです。
配偶者が破産しても、もう一方の配偶者の財産が処分されることはありませんので、ご安心ください。
(しかし、先述のとおり、配偶者の連帯保証人になっていた場合は、債務の返済義務が生じますので注意が必要です。)
3 自己破産は離婚理由になるのか。
配偶者の借金や自己破産をきっかけに「離婚」を考える方もいらっしゃるかもしれません。
もっとも、協議離婚が調わないときには、「借金があるだけ」では離婚できない場合があることに注意が必要です。
配偶者が協議離婚や調停離婚に応じないときには、裁判で離婚を求める必要があります。
裁判離婚が認められるためには、民法が定める法定離婚事由を満たしていなければなりません。
一般的に「借金がある」という理由だけでは、裁判離婚は認められないというのが、現在の解釈です。
借金による離婚が認められるのは、借金の原因が浪費(ギャンブルなど)などにあり、それゆえに婚姻生活を継続することが難しいだけの重大な理由があると認められる場合に限られます。
4 妻・夫が自己破産を考えているという方は弁護士へ相談を
配偶者が自己破産することになれば、さまざまな不安がよぎるかと思います。
もっとも、自己破産で生じるデメリットは、イメージされているものよりは小さいと考えられます。
「夫が自己破産したから妻のクレジットカードも使えなくなる」「妻の財産まで処分されてしまう」ということはないので、デメリットを回避する目的で離婚する必要もないといえます。
配偶者が借金に苦しんでいて、自己破産などの債務整理を検討している場合には、本人とともに弁護士に相談をし、適切に対応することがとても大切です。
自己破産についてご不安な点があるときには、お気軽に当法人にご相談ください。
債務整理に強い弁護士が、それぞれのケースにあった最善の方法を検討させていただきます。
夫婦ご一緒での相談ももちろん可能ですので、どうぞ安心してご連絡ください。